ShareBasedのコミュニティ学

WEBとリアルが融合したコミュニティを、どう運営すれば良いかの実験の記録です。

<ハイブリッド経済(6)>音楽を囲むフェスからテクノロジーを囲むガレージへ。コミューン第3の現場。

コミューン第1の現場は農業を中心とした共同生活でした。これはカルト色も強く社会的問題も引き起こしました。第2の現場は音楽を中心としたフェスの文化。ここでは常時一緒に過ごしていなくても、フェスのタイミングで自分たちの縄張りをつくって臨時コミューン、共同体意識を再確認していた、そして自分たちの主張を強化していったものです。

第3の現場の中心はテクノロジーでした。そして物理的な場所はフェスからガレージへ。

Stay Hungry, Stay Foolishの影響

アンチベトナム戦争の影響でアンチテクノロジー一色だったヒッピーのムーブメントはどのようにテクノロジーを受け入れていったのでしょうか。最も大きな影響のひとつはスチュアート・ブランドのWhole Earth Catalogです。

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彼自身もヒッピー代表でしたが、この本の影響はのちにスティーブ・ジョブズやウォズニアック、ビル・ゲイツの所属するホーム・ブリュー・コンピュータ・クラブの結成につながりシリコンバレーの基礎をつくっていきます。

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この様子はバトル・オブ・シリコンバレーという映画を見るとわかりやすいです。(AppleMicrosoftの戦い)

www.youtube.com

また、当時完全にヒッピーで「テクノロジーは回避するものだと思っていた」と言っていたケヴィン・ケリーをまさかのテクノロジーと文化の雑誌WIRED創刊へ向かわせます。(彼の話は大好きなので、また別に機会にどっぷりと。)

audioguide2.webtalks.co.kr

ちなみにケヴィン・ケリーはWhole Earth Catalogの編集者で、スチュアート・ブランドはWIREDの編集者もやっていました。

wired.jp

何が彼らをそこまで駆り立てたのでしょうか。

民主化の熱と適正なテクノロジー

アンチテクノロジーは政府や大企業を彷彿とさせるものだったために生まれた考えでした。しかしスチュアート・ブランドはWhole Earth Catalogの中で「適正なテクノロジーは僕らの生活を豊かにしうる」というメッセージのもと家をつくったり自然エネルギー活用したりするDIYの方法を紹介していきました。

要はヒッピーの精神の根本は「民主化です。そしてコンピュータ、インターネットの精神も民主化です。相性が良かったみたいですね。

インターネットのはじまりは軍事目的のARPANETでしたが、当時MITの大学などが学術用に開発を進めていました。当時学生で大学から開発を依頼されていたリチャード・ストールマンはその際「コンピュータの前では誰もが平等であるべき」という考えのもと、パスワードの概念を盛り込むことをしませんでした。その後に大学側が管理システムの一部にパスワードをかけましたが、彼はそれを突破して「入力の手間が省けるようにパスワードを""=空欄にしておいたよ」とメールをします。クラッキングの興りですね。

彼はその後フリーソフトウェア財団をつくりますが、今ネットで無料のソフトが当たり前に手に入るのは彼の思想の影響も大きいです。Linuxの大きな部分を占めるGNUの開発者でもあります(というかもともとそっち)。ただ、かなり極端な思想だったため、その後オープンソースの流れとは袂を分かちます。

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前日本語版があったんですが、今英語しかものの、Revolution OSはこのあたりの話をドキュメンタリーでまとめていて非常に面白いです。Linuxオープンソースの話です。これもまた別の機会にどっぷり書きます。

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コミューン第3の現場、ガレージ

とにもかくにもこれ以降Google, Apple, Amazon, ヒューレットパッカードなどに代表されるガレージベンチャーが次々と生まれてきます。

web-academia.org

こういう経緯があるため、ITの世界は根本からしてハイブリッド経済です。そのおかげで商業経済の人間には理解ができず(無料でソフトをつくる人たちが市場を荒らしている、無料で動画をアップする人たちが市場を荒らしている)、また法整備も追いつかず、急激な成長とともに様々な軋轢を生み出していきます。

ここではITの文化がつくるハイブリッド経済の中身だけ整理するにとどめます。

商業経済・・・ハードウェア・ソフトウェアの販売、サービスの販売

共有経済・・・無料でオープンアクセスなソフト、データ、好奇心、自分のためにつくったものでもみんなに改善・メンテナンスしてもらうためオープンにする人たち

現場・・・ガレージ

もうすぐコワーキングスペースハッカースペースがこの文脈に接続されます。次の記事でかけるかな・・?書きながら考えてみます。