ShareBasedのコミュニティ学

WEBとリアルが融合したコミュニティを、どう運営すれば良いかの実験の記録です。

<ハイブリッド経済(9)>ものづくりでハイブリッド経済をつくろうとした結果。

僕が意図的につくろうとしたハイブリッド経済の実験の結果です。

混ぜようとしたのはこの二つです。

商業経済・・・イベントの制作

共有経済・・・オープンソースなものづくり(メイカームーブメント)

 ※それぞれの経済の説明についてはこちら

sharebased.hatenadiary.jp

 

で、いきなりの結論としては、

・「好きだからやる」と「責任を持つ」というのを分離する

・「責任」に課金する

・「好きだからやる」にも色々あるし、それぞれに関わり方とタイミングを設定する

というのが大事だと思います。

 

Power of non-professionalは本当か

メイカームーブメントに限らずですが、ものごとの基本的な流れはクローズド→オープン、会社→個人に向かっていると思います。それってどんな価値があるんでしょう?WIREDの元編集長クリス・アンダーソンは書籍「Makers」に関するインタビューの中でこう語っています。

「本書のエッセンスをひとことで言うなら“Power of non-professional”だ。アマチュアのパワーこそが、『ロングテール』『フリー』『MAKERS』という3冊に通底するエッセンスなんだ」。アマチュアはその対象を愛しているからこそそれをやる。プロはお金のためにやる。「好きだから、というのはお金のためにやるよりもパワフルで、だからそれが時としてプロを超えることがある」。 

 

MAKERS―21世紀の産業革命が始まる

MAKERS―21世紀の産業革命が始まる

 

 

ただ、実際にはものをつくる人たちというのは個人でつくることのほうが多く、コラボレーションをするというのはかなり意図的にやらないと難しい、もしくは、意図的すぎて特に面白くない、みんなやらされになってしまうということもありました。ものづくりがオープンになってきてるっていうけど、本当にみんなコラボしたいとか思ってるんだっけ?別に個人でよくない?と悩むことも多かったです。

 

多様な人たちがそれぞれの文脈で関われるテーマ、Starlight Run

そう考えていた時に流行発信(名古屋の地元の出版社)の桑原さんからStarlight Runの話を持ちかけられました。(Starlight Runは夜に行う光と音のランニングイベントです)

実際の映像はこちら

www.youtube.com

当時は直感的に「これだ!」と思いました。夜×光×音×ランニングというテーマなら照明、音響に加えてセンサーを使ったり造形してみたりSNSで連携してみたり、WEBで外部とつないでみたり、色んなものづくりの人たちが協力する必要があります。また、ランナー、ダンサーにとって良いことは何か?も聞く必要があります。そうやって多様な人がひとつの世界観を、それぞれの持ち場で一緒につくっていくということが、このテーマなら可能だなと思いました。f:id:gaomutaihon:20150420115023p:plain

制作の過程についてはまた別途まとめます。ここではハイブリッド経済として学んだことについて。

お金をもらうことは、すべてのクリエイターにとって良いことか?

デザインの世界でも、制作物にお金が払われないという事例が多く、原価の割り出しづらいものに関してはお金がもらいづらいから難しいよね、という話をよく聞きます。ということはすべてにおいてお金は払われるほうがクリエイターにとって嬉しいことなんでしょうか?

完全に程度によります。そしてそれはその人が果たして「商業経済としてものづくりをしたい」のか「共有経済としてものづくりをしたい」のかによって大きく変わります。

 

共有経済に責任は発生しづらい。

商業経済としてのものづくりは、当然ですが有料です。金額によって価値が評価されます。同時に責任が発生します。期日までに期待されたクオリティのものが納品されることが求められます。状況によっては契約違反で責められる場合もあります。

すべてのものづくりは商業経済でしょうか?たとえばMaker Faire Tokyoなどのイベントに出展する場合はどうでしょうか。これは共有経済です。お金をもらっていないので。

makezine.jp

仮に間に合わなかった場合、間に合ったとしてもどうしようもない未完成の作品だった場合、クオリティが著しく低い作品だった場合、会場の意図とは違う作品だった場合。彼らは責められるでしょうか?Twitterでは叩かれるかもしれませんが、主催者から損害賠償は来るでしょうか?

主催者のほうの立場に立ってみると

(主催者)「いや、当日来ないとかイマイチでしょ!!」

と思うものの、仮にそれを理由に損害賠償を求めたとしても

(出展者)「そんな話聞いてないし、そもそも出展料払ってるし。こっちの責任でやってるんだからガタガタ言われても困るんですよねえ!」

と言い返されたらそれで終わりなのは目に見えています。

お金をもらわずにやるものづくり、こういった出展や発表の場では責任はあくまで自己責任です。誰かから何かを請求されることはあまりありません。そういう自由さがあります。また、主催者側の意図を汲む必要もありません。それも自由です。

お金をもらうということはこういう自由を手放すということです。主催者は「お金払ってるんだから、こちらの意図汲んでもらわないとこまるんですよ。納期に間に合わない?ありえない。納品できない?ありえない!!」と言う権利を渡すということです。

自分がどう関わりたいのかによって商業経済と共有経済を使い分けないといけません。そして、大事なのは相手にどう関わってもらおうとしているのか、それは合意の上なのかを事前に確認しないといけません。

Starlight Runでは、つくる側は共有経済(原価はもらうが人件費は出ない)という形で行いました。そして何が起こったかというと、当日ありえない土砂降りで納品できないものが数点ありました。雨対策も不十分だったため、コースに暗い部分が増えてしまいました。

主催者側からすると「納品できないものにお金は払えない!」と言えそうなところですが、「人件費ももらってないのにそれはないでしょ!」と言われるのが明白なため、大きなもめごとになりませんでした。

つくる側としては良かったかもしれません。しかし主催者からするとこれではイベントは成り立ちません。好きで、クオリティの高いものを作ってくれたとしても、それが当日ある保証はない、というのはビジネスをやる上でかなり不安です。

 

「好きだからやる」と「責任を持つ」というのを分離する

僕のハイブリッド経済の目的はやはりクリス・アンダーソンのPower of Nonprofessionalをちゃんと商業的に結びつけることです。彼らの好きなものづくりをサポートし、発信できる機会をつくり、ちゃんとそれをマネタイズすることです。同時にクライアントに安心して任せられる、新しいコンテンツを提供してくれる存在だと信頼してもらうことです。

なのでこう分離しました。

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商業経済と共有経済の整合性を保つ人を設け、それによって両者に価値を提供しようとしています。というかこれは完全にRed HatなどのLinuxディストリビューターのモデルの丸パクリですが。笑 

www.redhat.com

でも、最悪この中間にいる人がどうにかする、足りないリソースは引っ張ってくる、ニーズに合致するものと作り手が作りたいものを整合させる、など頑張ることが大事だなと思います。 

 

「責任」に課金する

お金をちゃんともらうことは大事です。実際、安い仕事のほうが気楽です。安ければ最後にはこう言えるんです。「そこまで求められるなら、この金額では割りが合わないですよ!」と。

ただ、本当にクライアントのためを思うなら、必ず必要な責任が全うされることが大事だと思います。「これだけ払ってこれかよ!」と言われないように頑張らざるを得ないです。松下幸之助翁は「値付けは経営だ。」と言いましたが、本当にその通りで、値段は期待される責任を左右し、企業の格を左右し、会社そのものを左右すると思います。

適正な値段をつけるというのはハイブリッド経済でも当然必要なことです。

 

「好きだからやる」にも色々あるし、それぞれに関わり方とタイミングを設定する

「好きだから」というのは、何が好きなのか人によって違います。作業自体が好きなのか、自分の想像通りのものができるのが好きなのか、設計するまでの思考が好きなのか、あるいは友達と話すきっかけ、媒体としてものづくりが好きな場合があります。もちろん貢献感を楽しむ人もいます。

さて、作業自体が好きな人や、友達づくりの媒体としてものづくりを見ている人は設計の段階から絡むとやることがありません。やることがないということはだということです。暇なプロジェクトに魅力を感じますか?できるだけ短い期間、常にある程度忙しいのがベストだと思います。完全燃焼した感じがします。

だから巻き込むタイミングが大事です。設計段階で100人も200人も必要ありません。そんなにいたら相当なマネジメント力がないと設計なんてできません。

少数で設計し、徐々に強みや志向を判断材料にしながら巻き込んでいくのが必要です。ということは、事前に誰が何をしたい人なのか知っておけるとベストです。

それは面談という形式をとると本音も何も言えないので一緒にみんなでご飯を食べたりするくらいがちょうどいいと思います。僕のやっているsharebase.InCはキッチンもありますし、そういう意味ではちょうどいいです。

誰が何を好きなのか、というのは共有経済を回す上で非常に大切な情報だと思います。

やっぱりハイブリッド経済って難しい!

現状、まだまだ改善する必要があることだらけです。お金と人の関係性というかなり厄介で相入れづらいものを扱うのでデリケートな問題です。でも、やっぱりPower of non-professionalは信じていたいなと思っています。特に、airbnbのように仕組みとしてハイブリッドを提供できているところは本当にすごいと思います。やっぱり商業経済を共有経済で支えるのはかなりパワフルです。やってて思います。今後こういうのが増えてくるんだろうなと強く思います。

一旦ハイブリッド経済シリーズはこれで終わりです。またこれ以降事例が増えてくればここで紹介していきます!!